ごあいさつ

『そうだん』の持つ意味と力について考える

 

民間相談機関連絡協議会会長
東京ボランティア・市民活動センター所長
山崎 美貴子

 

 日々、相談活動を進めていると、ふっと立ち止まって、自らの相談活動のあり方がこれでよいのか、利用者の訴えや語る言葉を十分に聴けているだろうか等と自問自答することがある。相談が終わり、机に向かって、記録を書き始めて手が止まる時がある。何か胸の中で、わだかまりがあり、納得のゆく相談のプロセスを辿れなかったのではないかと悩み、時にはすとんと胸に落ちないときがある。

 「そうだん」という行為は日常生活の中で当たり前に行われる。例えば、「今夜は仕事が終わって、少し時間のゆとりがあるので、寄り道をして買いたいと思っていた本を買いに行こうか、友人が入院している病院にお見舞いに行くか悩んでいます」などと相談されることがある。こうした個人的レベルの「相談」と異なる社会活動としての「相談活動」は社会的責任を伴い、活動を行う実践者として活動に参画すると、自らに厳しく自己点検し、自己評価を課することが求められる。

 先日。面談した或るクライアントは涙をこぼしながら語り終えたときに、「ありがとうございました。なんだかすっきりしました。いや、ほっとしたと言った方がいいのかもしれません。話しているうちに自分の中でわかってきたのです。一度にあれもやらなきゃ、これも大変との頭の中がごちゃごちゃしてしまって、いろいろなことが一度にどっと押し寄せてきて潰れそうな気持ちでした。でもね、出来ることと、できないこととがありますよね。話していてわかったのです。」と相談場面での感想を語ってくれました。

 この様な、クライエント自身が、涙をこぼしながら、自身の課題を自ら整理し、解決への道筋を組立て、語る姿にクライエントのつよみを実感します。相談活動の大切な側面は訴える問題にのみ焦点を当てるのではなく、クライエントその人であることを実感します。

 相談活動を進めるにあたって、クライエントをよりよく理解したいと願うのであるが、その際、どこに目を留めるかということが極めて大切ではないかと考える。その人が今、どのような「心の状態」にあるのか、どのような生活実態の中で暮らしているのか、健康の状態はどうか、障害を抱え生きてきたが、周りに支え手がいるのか、家族や身近な地域に相談をする人がいるのか、住んでいる場所の状態、活用できる有効な資源に到達できているか等その人とその人の周りの社会環境との相互作用にしっかりと目を留めてその人を理解しようと努めるのではないだろうか。こうした相談活動の場にたどり着いたクライエントをよりよく理解したいと願うあまりに、ついついクライエントを質問攻めにしてしまったり、語りたくないことまで、聞き取ろうとしたりして訊問形式の面接になってしまうことがある。まさに、クライエントを置き去りにして、相談員中心の相談活動の進め方になるときがある。また、クライエントの語る相談内容があまりに深刻であったりすると、クライエントが本当はどうしたいのかという意向を十分に確認する前に、相談担当者が解決にむけて動き出してしまったりすることもある。

 相談活動を進めるにあたって,私たち相談にあたる者はクライエントと歩幅を合わせ、クライエントの語る言葉、言葉にならない非言語の言葉、態度、表情、しぐさ、声の高さ、声の艶、速さ等、五感を十分に活用してクライエントからしっかりと向き合い、学ばせて頂くことが何よりも大切であることをしっかりと身に着けていきたいと最近ひたすらに思うようになってきた。学びの宝庫はクライエントの中にあるのだから。

 一人の人が一人の人間として、人にかかわることの重さとその深さ、多様さに圧倒される想いがある。民間相談機関に属する私たちがその学びを分かち合い、きづきあい、支えあいの集団として仲間とともにあることの喜びを実感している。